模擬国連とは
模擬国連は、1923年にアメリカのハーバード大学にて開催された「模擬国際連盟」にその原点があります。国際政治の仕組みを理解し、国際問題の解決策を考える過程を体験できることから、教育プログラムとしても高い評価を受け、現在では世界中の大学・高校において授業に採用されるほか、学生の課外活動としても楽しまれています。
模擬国連を端的に説明すると、参加者一人ひとりが一国の大使(外交官)となり、国連をはじめとした国際機関などで行われている様々な会議をシミュレートする活動です。交渉力・分析力・論理的思考力・英語力など様々なスキルを必要とされ、長きにわたり知的好奇心あふれる若者を魅了してきました。
日本の模擬国連
日本における最初の模擬国連は、1983年、当時上智大学の教授を務めていた緒方貞子氏(元国連難民高等弁務官)によって始められました。
1980年代、日本においては一部の学生や学者の間でしか知られていなかった模擬国連ですが、今日ではその活動は全国に広まっています。関東関西には、それぞれ東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、京都大学、大阪大学などを中心とした計7つの研究会があるほか、北陸や九州などにも支部が存在し、全国で800人近い数の学生が日々模擬国連活動に取り組んでいます。また、30年にわたる活動の結果、多数のOBOGを外務省や国連機関、金融業界、IT業界、商社、製造業やNGOなど幅広い分野へ輩出してきました。
現在、日本模擬国連(JMUN)では全日本大会の他に3つの全国大会(8月の関西大会、9月の九州サマーセッション、11月の北陸大会)と、ニューヨークの国連本部で開催されている「模擬国連会議全米大会」への日本代表団の派遣事業を毎年主催しています。
また、日中韓の大学生が模擬国連や文化交流を行う「日中韓ユースフォーラム」や、グローバル・クラスルーム日本委員会主催の高校生向けの模擬国連会議全日本大会が開かれるようになり、近年は大学だけでなく高校の授業や社会人のスキルアップの場においても、模擬国連が取り上げられるケースが増えるなど、日本において模擬国連は社会の様々な人々に取り組まれるようになってきています。
模擬国連の流れ
リサーチ
担当国が割り振られた参加者は、大使として会議に臨むことができるように、議題となる国際問題や担当国の内政状況・外交政策などについて調査・分析します。
参加者は、配布される議題解説書を読んだり、議題に関する勉強会に参加したりすることで会議や議題に関する基本的な知識を身につけ、それに加えて各々が専門雑誌・学術論文・国際機関の報告書や実際の国際会議の決議文書などを調べることで担当国の立場から議題への知識を深め、会議中の提案や行動を自ら考えます。
会議
実際と同様、模擬国連会議においてなされる意思決定は成果文書として形に残されます。そこで参加者は、担当国の大使として自国にとって有利な内容の成果文書が残るよう様々な提案を行い、それらへの支持を集めるために行動します。
しかしながら各国の主張には様々な利害関係が絡み合っており、それらを乗り越えるため参加者は様々な戦略や議論を展開します。単純な二項対立ではなく、多種多様な主張を持った国々と議論・交渉を積み重ね、問題解決を目指していくこのプロセスこそ模擬国連の1つの醍醐味とも言えるでしょう。
レビュー
会議が終了すると、担当国大使の立場ではなく個人としての立場に戻って会議の反省を行います。これは「レビュー」と呼ばれます。
レビューの形式は様々ですが、大使としての会議中の提案や行動の振り返りをすることで、担当国の立場から国際問題を捉えることの難しさや自分と違う視点を持つことの価値に気付くことができます。また個人としての立場に戻って国際問題を捉え直すことで、国際問題への理解をさらに深めることもできます。